「徹底捜査し北朝鮮に圧力」
警察庁の漆間巌長官は30日の会見で、警視庁や神奈川県警が摘発した北朝鮮関連の事件について「北朝鮮への圧力を担うのが警察。潜在的な事件を摘発し、実態を世間に訴える。北朝鮮関係者が起こしている事件は徹底的に捜査するよう全国警察に求めている。有害活動を抑える意味でも大事だ」と述べた。
松本京子さんの拉致被害者認定については「認定が遅かったとの批判があるが、昭和52年(1977年)に警察は拉致を知る状況になかった。小泉総理の訪朝で拉致問題は大きく変わり、情報が入るようになった。遅いといわれれば遅いが、世の中の事情があった」とした。
漆間長官は、今後も同庁として拉致容疑事案を追加していくとした上で、認定要件の緩和については「拉致ではないものが一件でもあると反撃を食らう。犯罪に該当するものを拉致事案に掲げており、警察が追加するとしたら(意思に反して移送されたなどの)3要件は譲れない。認定を行う政府が緩和するのなら、私たちとは別の考え方だ」とした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061130-00000091-jij-soci
[調査会NEWS 442(18.11.28)
■漆間厳警察庁長官の「日高さん、拉致認定は困難」発言に関するコメント
特定失踪者問題調査会 専務理事 真鍋貞樹
松本京子さんが11月20日に拉致認定されたことに先立って、11月9日、漆間長官が「現段階の情報では(日高信夫さんを)拉致被害者と認定するのは難しい」と定例記者会見で発言したことを読売新聞(11月10日朝刊)が報じた。確かに、現段階での脱北者による目撃情報だけをもって直ちに日高信夫さんを「拉致認定」することは困難であろう。
しかし、同日、調査会が塩崎官房長官に、特定失踪者の拉致認定を求める要請をしたばかりのタイミングでこうした発言が出たことを残念に思う。塩崎長官は「今後、政府未認定拉致被害者を拉致認定できるよう努力をしていきたい」とのコメントを定例記者会見で述べた。その後に松本京子さんが拉致認定されたことから考え合わせると、政府部内でも特定失踪者の認定を巡って大きな認識の相違があるように思える。
問題の所在は拉致被害者の「認定」である。この政府認定手続きの基準の曖昧性が古川了子裁判での論点になっている。拉致被害者認定の権限は内閣総理大臣であるが、当然、総理大臣が決裁するまでの手続きが必要であり、その手続きを実質的に進めていくのが警察当局ということになっているようだ。
漆間長官は拉致認定の基準として、北朝鮮の国家的意思が推認される、本人の意思に反する、北朝鮮に連れて行かれた、という3点の外形的事実が認定の基準となることを会見で改めて表明した。
この点について、調査会では再三にわたり、こうした外形的事実を拉致認定の根拠とする限り、特定失踪者の誰も拉致被害者として認定されることは無く、そして救出される見込みもないことになり、事実上の「見殺し」を意味すると主張してきた。これは、海に溺れている人を目の前にして、「あなたは誰なのか」「あなたは北朝鮮の意思によって海で溺れているのか」「あなたは自分の意思で溺れているのか」「どうやって北朝鮮があなたを溺れさせたのか」ということを調べてから救出するということと同じだ。
要するに「見殺し」である。溺れている人がいれば、外形的事実を調べるのは後回しにして、救出することが先であることは誰でも理解できることだろう。
要するに政府の「認定」というのは、警察当局がイニシアティブを持つ限り、犯罪事実の認定に終始するのであって、救出を必要とする対象者を認定するものではないということだ。拉致という証拠(長官のいう外形的事実)を一切残さない犯罪被害者の救出という困難な課題を解決する趣旨に立てば、被害者の「認定」とは、わずかな根拠(非外形的事実すなわち目撃証言や状況)によって、拉致された可能性と、救出の必要性があることを認定するしかないのである。
拉致された可能性と救出の必要性を拉致被害者認定の基準とすれば、当然そこに可謬性(誤りである可能性)が存在する。行政機構に可謬性は許容されないという伝統的な日本の官僚機構の文化構造からすれば、こうした基準を想定することはできないとされる。しかし、これまでの別の犯罪捜査と犯罪被害者の救済の歴史、例えばストーカー事件を例にみても、犯罪の可能性の推認と被害者救済の観点から法律改正をしてきた経過がある。このストーカー事件への対処も、実際に被害者が顕在化して初めて警察当局が動いたという苦い教訓の上にたってのことだった。
拉致被害者の認定という問題は、過去の日本の官僚機構にある可謬性の排除(官僚は誤りを冒さない)という根本的な問題を解決してからでなければ、解決できないのだろうか。それでは、これまでと同様の「過ち」を繰り返していくことになる。警察当局を含めて、日本政府には過去の苦い教訓を今日の拉致問題の解決に活かしてもらいたいと切に願う。
■日高信夫さん告発受理
ご報告が遅くなり、すでに報道はされてしまっていますが11月6日、警視庁に被疑者不詳、罪名国外移送目的略取で提出された告発状は11月21日、警視庁に正式受理されました。告発には法律家の会の全面的協力をいただきました。担当は法律家の会幹事である土田庄一弁護士です。
■戦略情報研究所講演会のお知らせ
戦略情報研究所では下記の通り講演会を開催します。今回は上記コメントにもある「拉致認定」の問題について、真鍋専務理事がお話しします。ふるってご参加下さい。
日時 12月1日(金)18:30〜20:30
会場:UIゼンセン会館2階会議室(千代田区九段南4-8-16 tel03-3288-3549)
※市ケ谷駅下車3分 日本棋院斜向い (地図は下記をご覧下さい)。
http://www.uizensen.or.jp/doc/uizensen/access.html
講師:真鍋貞樹(特定失踪者問題調査会専務理事)
テーマ 「拉致認定」の実態と問題点について
参加費 2000円(戦略情報研究所会員の方はお送りした講演会参加券がご利用になれます。参加券がない場合は一般参加費を頂戴します)
○予約等はありません。直接会場においで下さい。
「徹底捜査し北朝鮮に圧力」
警察庁の漆間巌長官は30日の会見で、警視庁や神奈川県警が摘発した北朝鮮関連の事件について「北朝鮮への圧力を担うのが警察。潜在的な事件を摘発し、実態を世間に訴える。北朝鮮関係者が起こしている事件は徹底的に捜査するよう全国警察に求めている。有害活動を抑える意味でも大事だ」と述べた。
松本京子さんの拉致被害者認定については「認定が遅かったとの批判があるが、昭和52年(1977年)に警察は拉致を知る状況になかった。小泉総理の訪朝で拉致問題は大きく変わり、情報が入るようになった。遅いといわれれば遅いが、世の中の事情があった」とした。
漆間長官は、今後も同庁として拉致容疑事案を追加していくとした上で、認定要件の緩和については「拉致ではないものが一件でもあると反撃を食らう。犯罪に該当するものを拉致事案に掲げており、警察が追加するとしたら(意思に反して移送されたなどの)3要件は譲れない。認定を行う政府が緩和するのなら、私たちとは別の考え方だ」とした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061130-00000091-jij-soci
[調査会NEWS 442(18.11.28)
■漆間厳警察庁長官の「日高さん、拉致認定は困難」発言に関するコメント
特定失踪者問題調査会 専務理事 真鍋貞樹
松本京子さんが11月20日に拉致認定されたことに先立って、11月9日、漆間長官が「現段階の情報では(日高信夫さんを)拉致被害者と認定するのは難しい」と定例記者会見で発言したことを読売新聞(11月10日朝刊)が報じた。確かに、現段階での脱北者による目撃情報だけをもって直ちに日高信夫さんを「拉致認定」することは困難であろう。
しかし、同日、調査会が塩崎官房長官に、特定失踪者の拉致認定を求める要請をしたばかりのタイミングでこうした発言が出たことを残念に思う。塩崎長官は「今後、政府未認定拉致被害者を拉致認定できるよう努力をしていきたい」とのコメントを定例記者会見で述べた。その後に松本京子さんが拉致認定されたことから考え合わせると、政府部内でも特定失踪者の認定を巡って大きな認識の相違があるように思える。
問題の所在は拉致被害者の「認定」である。この政府認定手続きの基準の曖昧性が古川了子裁判での論点になっている。拉致被害者認定の権限は内閣総理大臣であるが、当然、総理大臣が決裁するまでの手続きが必要であり、その手続きを実質的に進めていくのが警察当局ということになっているようだ。
漆間長官は拉致認定の基準として、北朝鮮の国家的意思が推認される、本人の意思に反する、北朝鮮に連れて行かれた、という3点の外形的事実が認定の基準となることを会見で改めて表明した。
この点について、調査会では再三にわたり、こうした外形的事実を拉致認定の根拠とする限り、特定失踪者の誰も拉致被害者として認定されることは無く、そして救出される見込みもないことになり、事実上の「見殺し」を意味すると主張してきた。これは、海に溺れている人を目の前にして、「あなたは誰なのか」「あなたは北朝鮮の意思によって海で溺れているのか」「あなたは自分の意思で溺れているのか」「どうやって北朝鮮があなたを溺れさせたのか」ということを調べてから救出するということと同じだ。
要するに「見殺し」である。溺れている人がいれば、外形的事実を調べるのは後回しにして、救出することが先であることは誰でも理解できることだろう。
要するに政府の「認定」というのは、警察当局がイニシアティブを持つ限り、犯罪事実の認定に終始するのであって、救出を必要とする対象者を認定するものではないということだ。拉致という証拠(長官のいう外形的事実)を一切残さない犯罪被害者の救出という困難な課題を解決する趣旨に立てば、被害者の「認定」とは、わずかな根拠(非外形的事実すなわち目撃証言や状況)によって、拉致された可能性と、救出の必要性があることを認定するしかないのである。
拉致された可能性と救出の必要性を拉致被害者認定の基準とすれば、当然そこに可謬性(誤りである可能性)が存在する。行政機構に可謬性は許容されないという伝統的な日本の官僚機構の文化構造からすれば、こうした基準を想定することはできないとされる。しかし、これまでの別の犯罪捜査と犯罪被害者の救済の歴史、例えばストーカー事件を例にみても、犯罪の可能性の推認と被害者救済の観点から法律改正をしてきた経過がある。このストーカー事件への対処も、実際に被害者が顕在化して初めて警察当局が動いたという苦い教訓の上にたってのことだった。
拉致被害者の認定という問題は、過去の日本の官僚機構にある可謬性の排除(官僚は誤りを冒さない)という根本的な問題を解決してからでなければ、解決できないのだろうか。それでは、これまでと同様の「過ち」を繰り返していくことになる。警察当局を含めて、日本政府には過去の苦い教訓を今日の拉致問題の解決に活かしてもらいたいと切に願う。
■日高信夫さん告発受理
ご報告が遅くなり、すでに報道はされてしまっていますが11月6日、警視庁に被疑者不詳、罪名国外移送目的略取で提出された告発状は11月21日、警視庁に正式受理されました。告発には法律家の会の全面的協力をいただきました。担当は法律家の会幹事である土田庄一弁護士です。
■戦略情報研究所講演会のお知らせ
戦略情報研究所では下記の通り講演会を開催します。今回は上記コメントにもある「拉致認定」の問題について、真鍋専務理事がお話しします。ふるってご参加下さい。
日時 12月1日(金)18:30〜20:30
会場:UIゼンセン会館2階会議室(千代田区九段南4-8-16 tel03-3288-3549)
※市ケ谷駅下車3分 日本棋院斜向い (地図は下記をご覧下さい)。
http://www.uizensen.or.jp/doc/uizensen/access.html
講師:真鍋貞樹(特定失踪者問題調査会専務理事)
テーマ 「拉致認定」の実態と問題点について
参加費 2000円(戦略情報研究所会員の方はお送りした講演会参加券がご利用になれます。参加券がない場合は一般参加費を頂戴します)
○予約等はありません。直接会場においで下さい。
