北朝鮮人権情報センターニュース(20)強制堕胎を逃れるために妊娠を隠していた女性が、集結所作業所で事故死 

└ 2012-09-02 17:20

北朝鮮人権情報センターニュース(20)強制堕胎を逃れるために妊娠を隠していた女性が、集結所作業所で事故死

事件の概要

2004年不法越境罪で中国から北朝鮮に強制送還された本件の被害者李錦順は強制堕胎を免れるために妊娠した事実を隠したまま清津市道集結所で拘禁生活をしていた2004年8月末頃、石幕(ソンマク)発電所建設作業場で事故により死亡。

事件の発生時期および場所

発生時期(期間) : 2004年8月20〜25日の間

発生場所 :咸鏡北道(ハムギョンブクド)清津市道集結所作業場(石幕発電所建設作業場)

人権侵害の類型

権利の類型 : 被疑者と拘禁者の権利 / 生命権

侵害の類型 : 強制労働による侵害 / 他人の直接的行動を原因とする死亡

細部な項目 : / 劣悪な作業環境により死亡

・ 被害者李錦順は2004年中国から北朝鮮に強制送還された後、妊婦ということを誰にも知らせないまま咸鏡北、清津市道集結所で拘禁生活をしていた。これは北朝鮮当局が中国人との婚姻関係下で妊娠した女性を送還した後、強制堕胎させるという噂が脱北女性たちにすでに多く広まっていたからだった。

2004年8月殆んど妊娠6ヶ月に入っていた李錦順は、すべての他の収監者らと同一に石幕発電所建設作業場の強制労働に動員されたのだが、その間における集結所での劣悪な食事と過酷な労働に苦しめられ、体が衰弱していた被害者は作業を円滑に遂行できなかった。事故当日、被害者は腹痛が続き作業をまともに遂行できなくなると、彼女の事情を知らない指導員は川底から石を拾って運ぶ仕事をさせた。 その当時、梅雨による洪水で川の水が急激に増え、水の流れが荒々しい川底で作業をしていた被害者は水の流れに飲み込まれ、水中から抜け出そうとしたが溺死した。

目撃者の証言によると、同僚たちが溺死した被害者を救い出した後、服を脱がせてみると妊娠により腹が大きくなっているのを隠すために何重も服を着ていただけでなく、腹を葛の紐で固く巻いてあるのを発見したという。この事故後、集結所側は女囚の服を脱がせて妊娠事実を一括調査したが、このような措置は妊婦を配慮するためではなく、強制堕胎させられなかった妊婦を探し出すためだったと証言者は話した。

“石を拾いに行ったが泥水に流されてしまいました。 腹を葛の紐でグルグル巻いていて、妊娠していた事実は死んだ後に分かりました。恩徳の子なのにどれくらい頑固なのか、同じ地域の子にも妊娠の話をしませんでした。 妊娠を隠さないと無条件(胎児を)中絶させられるからです...”

被害者

李錦順(女、年齢未詳、咸鏡北道恩徳〔ウンドク〕郡出身、現在の状態:死亡)

加害容疑者(機関)

咸鏡北道清津市道集結所

情報提供者

情報提供者は2011年韓国に入国し、上の事件を直接目撃した後に証言したが、自身の身辺安全上の理由から実名の公開を許諾しなかった。

情報の出処 : (社)北朝鮮人権情報センター人権調査面接紙

情報受付時期 : 2012年5月

情報受付場所 : 北朝鮮人権記録調査室

情報受付方法 : 面談調査

情報取得および事件分析者 : 北朝鮮人権情報センター研究員

検証者 : 北朝鮮人権情報センター北朝鮮人権事件リポート検証委員会

北朝鮮の集結所は、北朝鮮の刑法に規定されていない不法拘禁施設で、強制労働が賦課される一種の臨時収容施設である。 咸鏡北道清津市松坪(ソンピョン)区域農圃(ノンポ)洞(現恩平〔ウンピョン〕洞)に位置する咸鏡北道清津道集結所は1970年代に設立され、当時は犯罪者が予審を受ける前に拘禁される場所だった。その内1998年以後からは中国から強制送還される不法越境者を主に拘禁および管理し、‘不法越境者集結所’と呼ばれるようになる。

集結所に拘禁中の多くの収監者は劣悪な食事と不潔な飲料水により胃腸障害や下痢に苦しんだり、少ない量の食事と強制労働で栄養失調にかかる場合が多い。収監者は一日三食食事を提供されているが、毎食ごとに提供される食事の量と栄養素は非常に劣悪だ。 収監経験者の証言によれば清津道集結所の場合、2010年を基準に一食100g-150gのとうもろこし飯と塩の汁だけが提供され、飲料水の供給も非常に不足した状況だったという。

集結所での強制労働は、主に該当保安局に帰属する副業地で行われる。 また、保安局管轄下の各種建設現場にも収監者が動員され、冬には伐採地に送られる。伐採地は主に咸鏡北道清津市青岩(チョンアム)区域橋院(キョウォン)里の山中に位置している。脱北者の証言によれば、強制労働は午前8時から午後6時(日が沈む頃)まで続き、休み時間はないという。また強制労働の過程で殴打される事件が頻繁に起き、特に労働能力が落ちる老弱者および女性に殴打が集中するのが集結所の強制労働の現実だ。

一般的に強制堕胎の定義は、妊娠した女性の同意なしに強制的に胎児を堕胎させる手術を指す。特に北朝鮮当局は、中国で妊娠した状態で強制送還された脱北女性に対し、強制堕胎手術を頻繁に行っているのが実情だ。北朝鮮当局は妊娠した脱北女性が、‘中国の男の種を孕んで妊娠したという’理由から、次のような方式で強制堕胎を執行している。 最初に、強制的に薬品を注入して胎児を堕胎させる場合がある。 二番目に、深刻な強制労働や拷問で胎児を堕胎させるケースがある。 三番目に、病院の産婦人科を通じて強制的に子供を引っ掻き出し(掻把)堕胎させる場合がある。最後に拘禁施設の管理者の殴打で強制堕胎させるケースがある。 北朝鮮当局は妊娠月数により、上の方法を使い分ける。

北朝鮮人権情報センターの「NKDB統合DB」によれば、2011年8月を基準に強制堕胎の申告件数は255件で、この内集結所拘禁中に発生した強制堕胎申告件数は70件。

1.生命権

「市民的および政治的権利に関する規約(B規約)第3部第10条3項1節」
- 刑務所収監制度は服役者の校正と社会復帰を基本的な目的とする処遇を含む。

「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)第3部第6条1項」
- すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。

「市民的および政治的権利に関する規約(B規約)第3部第10条1項」
- 自由を剥奪されたすべての人は人道的に、また人間の固有な尊厳性を尊重して取り扱われる。

2.拘禁施設での労働 

「国連被拘禁者処遇準則第2部第71条1項」
- 教導作業は性質上、苦痛を与えるものであってはならない。

「国連被拘禁者処遇準則第2部第71条2項」
- すべての受刑者は作業の義務を負うが、義務官の判定する身体的、精神的適正に合うものでなければならない。

「国際非拘束者処遇準則第2部第72条1項」
- 教導作業の組織及び方法は、可能な限り施設外の同種の作業と類似したものとし、受刑者を正常な職業生活環境に備えさせなければならない。

「国際非拘束者処遇準則第2部第74条2項」
- 職業病を含む産業災害から受刑者を保護するための規定が備わってなくてはならず、この規定は法律によって自由労働者に認められる条件より不利であってはならない。

3.加害容疑者

「朝鮮民主主義人民共和国刑法第5章社会主義経済を侵害した犯罪、第4節労働行政秩序を侵害した犯罪、第185条(労働保護および労働安全施設を整えなかった罪)」
- 機関、企業所、団体の責任者が労働保護および労働安全施設を整えずに人命被害、その他厳重な事故を起こした場合には、2年以下の労働鍛練刑に処する。前項の行為で多くの人を死に至らしめた場合には、4年以下の労働教化刑に処する。 情状が重い場合には4年以上8年以下の労働教化刑に処する。

「朝鮮民主主義人民共和国刑法第5章社会主義経済を侵害した罪、第4節労働行政秩序を侵害した罪、第186条(労働安全秩序違反罪)」
- 労働安全秩序を破り、人命被害その他の厳重な事故を起こした者は、2年以下の労働鍛練刑に処する。 前項の行為で多くの人を死に至らしめた場合には3年以下の労働教化刑に処する。情状が重い場合には3年以上8年以下の労働教化刑に処する。





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